4年連続売上トップ!「競艇発祥の地」ボートレース大村はなぜファンを魅了してやまないのか

長崎県の大村市という地名を知っているかと聞かれて「Yes」と答えられる人は、競艇ファンと九州出身者以外では多くあるまい。
大村市は長崎空港があるほか、2022年に西九州新幹線の新大村駅が開通するなど、年々利便性が向上している地方都市である。
大村湾に面している大村市は、長崎県では比較的知名度の高い諫早市に隣接しており人口は約9万人、長崎市のベッドタウンと位置付けられている。
東京や大阪などの大都市圏の人間からすれば「小さな町」だが、長崎県では第4位の人口を有するまあまあの規模だ。
特筆すべきは、昨今の地方都市が人口減少にいかに歯止めをかけるかという共通の課題を抱えている中で、大村市の人口は増加し続けているのである。
競艇が人を集めているとまでは言わないが、市の魅力は財政によるし、大村市の財政を支える柱の一つにボートレ―スがあるのは間違いない。
今回は、ボートレース大村について語りたい。

4年連続で競艇場別の売上日本一を達成

統計を取ったわけではないが、交通機関や公的なものを除けば、大村市のもっとも知名度の高い施設はボートレース大村ではないだろうか(玖島城跡は観光スポットであるが「跡」なので除外)。
Wikipediaで「大村市」を引くと、市の概要の説明の中で人口、交通に次いでボートレース大村が触れられている。

財政では大村競艇場の売上が増加している(2019年には年間売上日本一となった)影響もあり大村市への繰入れ金額も増加している

とあるのだが、困ったことにWikipediaの情報は更新されていない。
2019年以来2022年まで、ボートレース大村は4年連続で年間売上日本一を継続しているのである。
ボートレース大村は「大村市の財政(一般会計)に寄与し、市民の福祉向上に資すること」をミッションに謳っており、2022年は収益のうち110億円を市の一般会見に繰り出したという。
「ボートレースの市」と聞くと何やら行政とギャンブルが癒着しているかのようなネガティブなイメージが浮かぶが、ボートレースで稼いだお金で小中学校のエアコン設置、災害復旧、西九州新幹線の周辺整備が進められているというから、これは事業と市民サービスの歯車が嚙み合った好例と言えるのではないだろうか。

「イン天国」とネット投票への取り組みが功を奏した?

ボートレース全体がここ数年で大きく売上を伸ばしており、2020年度以降、ボートレース全体の売上は30%以上の急激な伸びを示している。
この時期がコロナ禍と重なるために、「巣ごもり需要」が競艇人気を後押ししたと言われているが、好調の競艇界にあって大村は、2020年度にダントツの50%以上の成長を果たしているのである。
業績好調の要因について大村市ボートレース企業局は、「最高峰レースのSGグランプリを初開催できたことが大きい」と分析している。
2022年は売上1807億円、そのうち14.3%にあたる259億円がSGグランプリによるものというから、その見立ては間違いではないだろう。
2021年に試験的に開催された「ミッドナイトボートレース」もまた、11日間で127億円と、G1レース並の売上があったという。
これらの売上の8割を占めるのが電話・インターネット投票だ。

大村は、地元のマーケットポテンシャルが小さいこともあり、早くから電話・インターネット投票に力を注いできた。
さらに、場外舟券発売場が県の内外に15箇所と、これも全国24会場の中で最多である。
顧客とのタッチポイント(接点)を数多く確保していることは、当然のこと販売増につながる。
そして、大村の水面は「イン天国」と呼ばれる。
イン勝率が60%を超えるなど、大村は全国一と言われるほどインが強い、すなわちインが鉄板で「当てやすい」。
このことを競艇場自身が積極的に宣伝し、インコースに有力選手を配する本命番組を組む傾向が強いことも、ファンの舟券購入を後押ししていると言えるだろう。

同時に、大村はネット投票以外でも非接触・キャッシュレス化を積極的に推進している。
キャッシュレスポイントサービス「ORICA」は来場と舟券購入でポイントが貯まるカード、「マイルクラブ大村24」はネット投票で大村の舟券を購入するとマイル(ポイント)が貯まるサービスだ。
リアルの「来場」と非来場の「ネット投票」の両方を推進しているのが面白い。
こうしたサービスを通じて、大村は「舟券購入」を「お得な行為」に変えてしまったと言えるかもしれない。

ボートレース大村といえば「発祥地」

国内24会場ある競艇場の中で最南端、かつ最西端にあるボートレース大村は、「競艇発祥の地」として知られる。
『競艇沿革史』によると開場した1952年(昭和27年)当時、三重県の津と大村が運輸省の競艇場第一号認可を巡って競っており、津が第一号に決まりかけていたらしい。

しかし、まだ競艇がどのようなものか分からない段階であったため、「何か問題が起きたときに中央よりも遠いほうが目立たない」という理由でテストケースとして大村に第一号認可が下りたと言われる。
消極的な理由ではあるが、「発祥の地」の栄誉は動かない。
とにかく1位であること、2位以下は最下位も同じ、これはマーケティングの鉄則である。

ボートレース津が「2着」であることなど関係者以外は知らないだろうし、知っていても何の「売り」にもならない。
当時の大村競艇場の関係者にマーケティングセンスがあったかどうかは知る由もないが、この「発祥の地争奪レース」に大逆転勝利したことは、その後の集客戦略の成功につながっているように思える。
なお、2018年から開始したナイター競艇は一般公募により「発祥地ナイター」と名付けられ、その名称は現在も継続して使われている。
「ボートレース大村=発祥地」のブランディングを大村は最大限に活用している。

シロウト感丸出しのテレビCMで人気

ボートレース大村の名を競艇ファン以外にも知らしめたのはテレビCMだろう。
テレビCMといっても協会が資金力にモノを言わせて人気タレントを使う全国放送版ではなく、ボートレース大村独自のローカルCMである。
このCMがなかなかにいい味を出しているのだ。

まず、有名タレントなど使わないしBGMのタイアップもない。
一番有名なものは競艇選手を並ばせてセリフを言わせ、「ボート~レースおおむら~」とオリジナルソングを歌わせるシリーズであろうか。
毎回「〇〇の歌」という設定で歌詞を変え、ボートレース大村の選手や競艇の豆知識、会場の特徴などを紹介している。
素人だから当然セリフは棒読み、歌もうまくない、それが「ジワる」。
味わいとしては、関西の方なら「関西電気保安協会」のCMをイメージすると良いだろう。

残念ながらCMは九州でしか放送されないので九州以外の人はYouTubeに新作が上がるのを待つしかないが、このいかにもローカルな面白CMにはボートレース大村の個性が凝縮されていると言えよう。
すなわち、予算がなくとも面白いものは作れるという「地方の意地」のようなものと言えば良いだろうか。
まさに「金がなければ知恵を出せ」を地で行くCMなのである。

「おっさんホイホイ」なPR大使戦略

「おっさんホイホイ」という言葉をご存じだろうか。
SNSなどで、たとえば昭和の話題を出すと、普段はおとなしい年配者が熱心に自分の経験談を投稿する、その有り様を言う。
ボートレース大村のPR戦略は、実におっさんホイホイなのである。
イメージキャラクターとしてタレントを年間契約で使うのはよくあるパターンだが、大村
の「PR大使」は二次元、そうマンガなのである。
それも今はやりの作品ではなく、いかにも競艇のコアなファン層であるおっさん年代が好きそうな懐かしいものを引っ張ってくるのだ。
『宇宙戦艦ヤマト2202』に始まり、『ゴルゴ13』『ウルトラマン』『タイガーマスク』と続き、そして今年は『天才バカボン』である。

実は今年PR大使に就任した『バカボン』は、それまでのキャラクターとは位置づけが違う。
『ヤマト』から『タイガーマスク』まで、PRする対象は「発祥地ナイター」であったのが、『バカボン』はボートレース大村全体をPRしているのである。

大した違いはないようにも思えるが、担うものが「一部」と「全部」ではマーケティング的な意味合いが大きく異なる。
イメージキャラクターは「旬」の人物やキャラクターが起用されることが多い。
しかし、大村は『SPY×FAMILY』や『推しの子』ではなく、あえて懐かしのキャラクターを選んだ。
もちろん予算の関係もあるだろうが、これもマーケティングである。
誰にでも好かれるような施策は、結局誰にも好かれないまま終わることが多い。

『バカボン』をPR大使に据えたことで、「大村は流行に乗るような競艇場ではない」という「らしさ」が明確になったわけだ。
CMもそうだが、この「筋の通った」「ブレない」戦略が、多くのファンを引き付けているのではないかと思う。

まとめ 結局、当り前のことを当り前にできるのが最大の強み

さて、ボートレース大村の特徴をいくつかあげてみたが、冷静に考えてみれば、大村にしかできないことなどほとんどない。
ということは、他の競艇場も真似できるし、真似すべきなのである。
前述のように、今は競艇全体が売上を伸ばしており潤っているので、多くの競艇場は満足してしまっているのかもしれない。
しかし、好調の波はいつか収まる。
そのときに「どうしよう」と慌てても遅いのだ。
好調な時にこそファンを集め、つなぎとめる施策を確立しておくことが重要なのである。

大村のGoogle口コミを見てみよう。
平均点が3.5以上ならまずまず高評価と言われているが、大村は870件ものレビューがあって平均点が4.1、これはかなりの高得点だ。
口コミは施設内のキレイさを話題にしている者が多い。

館内は掃除が行き届いておりとても綺麗でした

今までいったボートレース場のなかでは1番綺麗

カップルや子供連れの方も多くイメージが違っていました

CMやマンガとコラボしたPR大使などのマーケティングに熱心なだけでなく、きちんと当り前のことを当り前にやっている。
こういったことが何より人の心を打つのである。
ボートレース大村に学ぶべきことは多い。

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Posted by 競艇の鬼