2011年以降の競艇CMを振り返ってみれば
今、テレビやネットでよく見かける競艇のCMといえば「アイ・アム・ア・ボートレーサー」。
ボートレーサーを目指す二人の若者「カミオ」と「ハルカ」の成長をドラマ仕立てで描き、競艇の魅力を広めようという趣向のようです。
こういったCMがどのくらい競艇の集客に影響しているのかは分かりませんが、競艇の売上の推移を見ると興味深い「一致」に気付きます。
従来、年間のテーマソングを作ってCMで流すくらいのことしかしてこなかった競艇が、旬のタレントを使ったインパクトあるCMキャンペーンを展開するようになったのは2011年以降。
実は、バブル崩壊後に低迷していた競艇の売上が急上昇し始める起点となったのが2011年なのです。
以後、競艇は売上を落とすことなく右肩上がりの成長を続け、2021年にはバブル期を超えて最高の売上を記録しました。
もちろん、安倍政権が成立するのが2012年で、アベノミクスなどがあって世の中の景気が上向いたという環境はあるでしょう。
とはいえ、景気が良くなっても競輪やオートレースの売上はさほど上向いてはいません。
そう考えると、やはり、競艇は積極的なプロモーションの取り組みが功を奏した部分も小さくないと思うわけです。
では、2011年以降、競艇(ボートレース振興会)はどんなCMキャンペーンを展開してきたのか、振り返ってみましょう。
2011年〜2013年 南明奈の「アッキーニャ」
アイドルタレントの南明奈が、ボートの黒、黄、緑、赤、白、青に合わせた猫のキャラクター「アッキーニャ」を演じました。
「森の熊さん」をロック風にアレンジしたサウンドに合わせて可愛く(あざとく)ダンスするアッキーニャ。
キャッチフレーズは「Battle of 6」、決めゼリフは「どの色、好きなの?」と、競艇の特徴をさりげなくアピールしています。
このキャンペーンは好評だったと見え、さまざまなバリエーションのシリーズ動画が多数制作されるなどして3年間も続きました。
2014年 渡辺直美の「ボートニャー」
猫キャラで味をしめた(?)ボートレース振興会が、南明奈に代えて渡辺直美を中心とする6人のダンスユニットで新キャンペーンを展開します。
その名も「ボートニャー」、三角耳のマスクをつけ、お尻には長いしっぽ。
南明奈は若い男性をターゲットにしていたと思われますが、今回は女性にも好感度の高い渡辺直美を起用し、新たなファン層の開拓を試みたと見えます。
キャッチフレーズは「DYNAMITE BOATRACE」。
出演者名を告げずにボンデージスーツの6色の覆面ダンサーが登場し、最後にダンサー一人がアップで映り、「GUESS WHO?」(誰だと思う?)のフレーズが出るという趣向でした。
一人ひとりダンサーの正体を明かしていくことで興味を継続させようと試みたのでしょう。
正直、男性視聴者にとっては、渡辺直美以外は「言われても知らない」女性タレントばかりでしたが・・・。
2015年 すみれの「ボートニャー」
ボートニャーのユニット名はそのままにメンバーを一新、石田純一・松原千明の娘のすみれがメインキャストを務めます。
キャッチフレーズは「BE DYNAMITE!」、ダイナミックなダンスで視聴者の目を釘付けにしました。
2016年 すみれの「BOEDO CITY」
前年はダンス中心の美しい映像でしたが、イマイチ競艇ファンの心をつかめなかったようで…。
翌2016年のCMは、主役のすみれはそのままに、ミュージカル風アクション時代劇を展開しました。
水の都「BOEDO」にはびこる悪い奴らをすみれが華麗なアクションで成敗するというものですが、競艇と何の関係があるのか・・・。
あと、「水の都」って普通は江戸ではなく大阪を言うんですが・・・。
よく分からない時代劇でしたが、ゲストと映像は豪華で、売上右肩上がりの勢いを感じたキャンペーンでした。
2017年 渡辺直美の「DYNAMITE BOATRACE!」
3年ぶりにCMキャラクターに渡辺直美が復帰します。
この年のキャンペーン以降、「渡辺直美=競艇」のイメージが強く視聴者に刷り込まれたように思います。
BENIの歌うしっとりしたドラマチックなテーマソングをバックに、セリフは一切なし、渡辺直美とボートレースを重ねたイメージ映像だけの上品なシリーズCMが作られました。
映像のところどころで競艇場の客席にいるお洒落な女性が映るのは、やはり新規の女性客の獲得がテーマだったのでしょう。
「なぜに~恐れないの~」で始まるテーマソングのタイトルは「見えないスタート」。
競艇は水上にスタートラインが引いてあるわけではなく、センターポールの中心線と、大時計の文字盤の右端を競走水面上に見通した線をスタートラインとみなしており、それを歌詞にしたのでしょう。
また、メロディは「どこかで聞いたことがある」と思った方も多いはず。
この曲、実はベートーベンのピアノソナタ第8番「悲愴」第2楽章(で分かる人がいたらエライ)、クラシックの名曲の印象的な部分をアレンジしていたのでした。
2018年 渡辺直美とロバートの「Let’s BOAT RACE」
競艇と渡辺直美が大好きなマスター(ロバート秋山)のカフェを舞台にしたコント風CMのシリーズです。
マスターのおとぼけに壁のポスターの中から渡辺直美が突っ込むというナンセンスな展開が注目を集めました。
渡辺直美はボートの形をしたギターを持っており、しばしばこれを演奏するシーンが挿入されました。
ギターの弦は6本、そう、競艇も6艇のレース。
これにメタファーに気付いた視聴者はそう多くはなかったでしょう(笑)
渡辺直美がギターをかき鳴らすと弦の上をボートが走り出してギターから飛び出していくイメージが、キャンペーン中に繰り返し放映されました。
キャッチフレーズは「Let’s BOAT RACE」、コンセプトは「ファンの方も、ボートレース未経験の方も、年代性別を問わずもっと気軽にボートレースをやろう!」だったそう。
最初は競艇に興味のなかったロバートの山本と馬場が、回を追うごとに競艇への関心を高めていくストーリーには、見ているうちになんとなく引き込まれた人もいたのではないでしょうか。
2019年 渡辺直美・ロバート・田中圭の「BOATFUL FANTASY(ボートフル ファンタジー)」
これまでの競艇CMは、ストーリーがあるとしても基本的には一話完結で、連続ドラマ的な展開のキャンペーンはこの年が最初でした。
キャストは前年から引き続き渡辺直美とロバートの3人。
それに俳優の田中圭とCYBERJAPAN DANCERSが加わります。
脱サラしてボートレーサーになった田中圭を雑誌記者のロバートが取材するという設定で、渡辺とCYBERJAPAN DANCERSは彼らを「神様の視点」から見守ります。
キャッチフレーズは「姫たちだって、Let’s BOAT RACE」。
ここで田中圭はうじうじしたキャラクターを演じており、自信を失い、トイレの中で自分はダメだと悩んでいる姿が描かれます。
これを見ていた渡辺直美を中心とする人魚姫たち、海の中から田中圭を「誰もが経験ゼロから努力を積み重ねて、立派なボートレーサーになるんでしょう!」と一喝。
これが届いたのか、気合を入れ直して田中圭はレースに戻るというストーリーでした。
「誰もが経験ゼロから」というのは実際の話で、競艇選手のほとんどは養成所に入るまでボートに乗ったこともないそう。
ドラマの中でしっかり選手リクルートのヒントも流していたのでした。

2020年 田中圭の「ハートに炎を BOAT is HEART」
ボートレーサー田中圭が引き続き登場。
ライバル選手を演じる武田玲奈、葉山奨之、ベテランレーサーの飯尾和樹らも加わり、それぞれの境遇やレースにかける思いが描かれ、群像劇の趣きを強くしていきます。
年間を通じてのキャッチフレーズは「ハートに炎を BOAT is HEART」。
その中で、「ハートに炎がついたワケ』というサブテーマが提示され、タナカの場合、レナの場合、イイオの場合、ハヤマの場合という具合に、それぞれがボートレーサーを目指したきっかけを描くスピンオフ動画が特設サイトで公開されるという新しい試みがなされました。
田中圭は女性ファン獲得の配役でしたが、ショートカットでキュートな武田玲奈が登場し、健康的なセクシーショットもあったりして、男性ファンも忘れていませんよということをアピールしていましたね。
男女が同時に出走するという競艇ならではの様式を、このCMで知った人もいたそうです。
2021年 カミオとハルカの「Splash! ボートレーサーになりたい!」
今回は高校を卒業する男女が競艇の世界に飛びこむ設定のキャンペーンです。
連続ドラマ仕立ては前シリーズを踏襲し、カミオは「スポーツで一生食っていく」ために、ハルカは現役レーサーである母(MEGUMI)に憧れて、ボートレーサーを目指します。
今回はレースそのものよりもボートレーサーになる過程にスポットが当てられました。
あまり一般には知られていないボートレーサー養成所の生活が描かれ、所長や教官、食堂のおばちゃんに、時に優しく、時に厳しく見守られながら二人は成長していきます。
高校時代はサッカー部で髪を伸ばしていたカミオが養成所入所を前に実際に坊主頭にしてくるのは、ドラマとはいえ気合を感じました(記者会見で、本当に髪を切ったのかどうかは明らかにされなかったので、もしかしたら特殊メイクかも)。
また、前シリーズでベテランレーサーを演じた飯尾和樹が養成所の所長になっており、連続ドラマさながらに世界観を充実させていました。
2022年 カミオとハルカの「アイ アム ア ボートレーサー」
養成所を卒業したカミオとハルカは先輩レーサーたちにもまれながら選手として成長していきます。
この先輩レーサーのキャストが個性豊かで、中村獅童、土屋アンナ、ゆりやんレトリィバァ、吹越満ら。
レースではレジェンド的存在であるシドウにあと一歩のところで負けてしまったカミオ。
しかし敗れたカミオに場内から割れんばかりの声援が送られ、シドウはカミオを一人前のレーサーとして認めます。
ボートレーサーには非公式な師弟関係があるのですが、カミオはシドウに弟子入りし、トップレーサーになるべく腕を磨くというストーリーです。
さて、2022年もあとわずか。
競艇のCMキャンペーンは、2023年も「カミオとハルカ」のストーリーは来年も続くことが発表されています。
昨年は市場最高の売上を記録した競艇、予算は十分あるでしょうから、今後はCMではなくドラマそのものになるかもしれませんね。

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