なぜスポンサー企業には酒造メーカーと交通機関が多いのか?ボートレースの「企業杯」まとめ

プロスポーツと企業は切っても切れない深い関係があります。
たとえば、プロ野球球団はそもそも企業が母体となっており、企業目線から見ればプロ野球は自社の広告宣伝活動の一環です。
シーズン中は毎日、チームが勝っても負けても会社名がニュースで読み上げられるわけで、会社の知名度と認知度を高めるには、プロ野球球団を持つことは最高の広告宣伝と言えるでしょう。
最近ではセ・パ交流戦やオールスターゲーム、クライマックスシリーズといった「企画試合」にも企業名が冠され、プロ野球という「興行」の広告宣伝ツールとしてのメリットが切り売りされるようになりました。
マーケティングの原則ですが、認知度は好感度に直結します。
知っている会社と知らない会社の商品が並んでいたら、人は知っている会社の商品を選んでしまいがちですし、人材採用においても有利です。
もちろん、スポーツチームを有したりイベント企画に会社名を冠したりするには莫大なお金がかかりますが、知名度や認知度の向上、好感度アップにおいてお金をかけるだけの価値を認める企業があるからこそ、企業のスポーツ後援は成り立っていると言えます。
ボートレースにおいても企業名を冠したレースがあります。
では、競艇ファン以外にはあまりに目に触れることのない、ボートレースの企業杯についてご紹介しましょう。
ボートレースの企業杯とは?
まず、ボートレースの企業杯レースは格付け上G3に分類されます。
競艇の格付けについて説明すると、上からSG、G1、G2、G3、一般戦の5段階があり、ちなみにSはSpacial、GはGrade、数字は等級を意味しています。
野球で言えば1軍、2軍、サッカーで言えばJ1、J2、自動車レースでいえばF1、F2みたいなものです。
競艇のG3は比較的下位のランクに位置し、1年間に約60回開催されます。
その内訳は、イースタンヤング(例年6月 ヤングダービーの東の予選)、ウエスタンヤング(例年6月 ヤングダービーの西の予選)、オールレディース(年23~26回 レディースチャンピオンの予選)、マスターズリーグ(年10回 マスターズチャンピオンの予選)、そして企業杯(年24回 企業がスポンサーとなって開催)となります。
企業杯が24回あるのを見てピンと来た人はいるでしょうか。
競艇の会場は全国に24箇所あり、企業杯は全会場で年1回開催されます。
なお、一般戦のヴィーナスシリーズで「Yes!高須クリニック杯」や「SOD女子社員酒場カップ」(いずれも江戸川)といった企業名が冠されたレースが開催されたことがありますが、「企業杯」の定義はG3のレースとされているので、これらは企業が後援するレースではあっても「企業杯」とは区別されています。
それにしても、アダルドビデオメーカーのSOD(ソフトオンデマンド)が女子選手のレースを後援していたとは、一体どんなプロモーションがあったのか気になりますね・・・。
全国24会場の企業杯一覧
では、全国の会場で開催される企業杯レースをご紹介します。
「この会場はこの企業」と決まっているところがあれば固定されていないところもあり、また複数の企業が順繰りに後援する会場もありますが、とりあえず全部書き出してみましょう。
桐生 : サッポロビールカップ
戸田 : 固定されてない
江戸川 : アサヒビールカップ
平和島 : キリンカップ
多摩川 : サントリーカップ
浜名湖 : SUZUKIスピードカップ/中日カップ
蒲郡 : KIRIN CUP/中日カップ/名鉄バス杯/愛知バス杯
常滑 : INAX杯とこなめ大賞/中日カップ
津 : マキシーカップ(三重交通)
三国 : スズキ・カープラザカップ
びわこ : キリンカップ
住之江 : アサヒビールカップ
尼崎 : FM OSAKA杯
鳴門 : オロナミンCカップ
丸亀 : JR四国ワープ杯
児島 : シモデンカップ
宮島 : 固定されていない
徳山 : 大塚SOYJOYカップ
下関 : 長府製作所杯
若松 : JR九州ビートル杯
芦屋 : アサヒビールカップ
福岡 : 福岡ソフトバンクホークス杯
唐津 : 酒の聚楽太閤杯
大村 : アサヒビール杯
スポンサーは酒造メーカーと交通機関で半分以上
ズラズラッと列記しましたが、「ん?なんか酒屋と交通機関が多いんじゃないか」と気づいた方もいるでしょう。
お酒はアサヒビールが4会場、キリンビールが3会場、サッポロビールとサントリー、唐津の鳴滝酒造が各1会場と、企業杯の約4割を酒造メーカーが占めていることになります。
ボートレース観戦のお供と言えばやはりビールですから、酒造メーカーとしては競艇ファンの好感度を上げておきたいところでしょう。
交通機関では名鉄バス、愛知バス、三重交通といったバス会社、JR四国、JR九州といった電鉄会社があります。
岡山県本社の電鉄やバスを含む総合運送業のシモデンもスポンサーです。
しかし、お酒は分かりますが、なぜボートレースの企業杯のスポンサーに交通機関が多いのか?
競艇場でお酒を飲むなら自家用車でなく交通機関でおいでくださいというPRを兼ねているのでしょうか?
まったくの想像ですが、競艇の広告ポスターは電車やバスの駅に貼り出されていることが多いので、その「お返し」なのではないかと。
今や電車内の広告スペースはどこもガラガラ、社内吊りがあると思ったら自社の広告で、電鉄会社やバス会社の広告収入は減少の一途をたどっています。
その理由としては、広告の世界もインターネットが主流となり、多くの企業が交通広告の予算をネットに振り向けているという流れがあります。
そんな中、ずっと広告を出してくれているボートレースは交通機関から見れば上客です。
なので、レースを後援して恩返しをしているのではないかという・・・。
地元企業の地域密着戦略
お酒と交通機関以外でスポンサーになっているのは、やはり会場の地元企業。
中日カップは中日新聞社が後援するレースですが、会場は浜名湖、常滑、蒲郡という中日新聞のお膝元の中京地区。
下関の長府製作所杯は山口県本社の長府製作所の後援です。
この長府製作所、給湯器や空調機のメーカーで東証プライム上場の一流企業。
住宅設備の会社として知名度では他メーカーに若干劣りますが、競艇ファンの間ではおそらくトップクラスの認知度を獲得しているというユニークな現象が起きています。
鳴門のオロナミンCカップは徳島県発祥の大塚製薬がスポンサー。
大塚製薬はもう一つ、徳山の大塚SOYJOYカップも後援しており、なぜ徳山?と思ったら、市民福祉の向上と地域活性化を進めるための包括連携協定を徳山市と結んでいるのだとか。
プロ野球の福岡ソフトバンクホークスがなぜボートレースのスポンサーをしているのかは分かりませんが、福岡本拠地のプロスポーツを総合的に応援したいという意図があるのかもしれません。
まとめ 企業杯は景気のバロメーター
企業杯の開催前には企業名が冠されたレースのポスターが掲示されるばかりでなく、一般のファンにスポンサー企業からのプレゼントが当たるクイズ企画なども実施されます。
ファンはプレゼントGET、レースの主役である選手にはスポンサー企業から1等賞金が贈られ、企業は商品PRとイメージアップという三方良しの構図が成立するというわけです。
その場で直接売上を上げようというのでなく、長い目でファンを作ろうというのが、企業のスポーツ後援の基本的な考え方です。
しかし、これには景気が大きく影響します。
企業をめぐる経済環境が悪化し業績が悪くなれば、真っ先に切られるのは広告費。
そうなれば当然スポーツ後援からの「撤退」もあり得ます。
今はコロナも終息し、比較的先行きが明るそうではありますが、好景気がいつまで続くかは誰にも分かりません。
これからも企業と競艇とファンの良い関係が続きますように・・・。
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