競艇がもっと好きになる!競艇漫画考 第2回

2022年12月6日

競艇少女

「競艇少女」
(原作 : 寺島 優 / 漫画 : 小泉 ヤスヒロ / 集英社)

漫画の世界は、ヒット作が出ると必ず後追いの作品が出現する。
「美味しんぼ」の後にはグルメ漫画が多数出現し、「ナニワ金融道」の後には金融や法律などの専門知識を軸に据えた漫画が乱立した。
その中にはいわゆる「二番煎じ」の域を超えないものもあるが、パイオニアをしのぐ人気作もときには生まれる。
言い換えれば、同じジャンルで人気作が二つ三つと出現したならば、そのジャンルは成熟に向かっているということだろう。
「モンキーターン」はたしかに競艇漫画として不動の人気を確立した。
では「競艇モノ」はジャンルとしてはどうなのか、「モンキーターン」に続く作品はあるのか、というのが今回のテーマである。

「モンキーターン」に次ぐ競艇漫画といえば、「競艇少女」だろう。
「競艇少女」は週刊ヤングジャンプに1996年から2003年にわたり連載され、単行本は14巻まで出ている。
「モンキーターン」が始まってから連載開始、「モンキーターン」が終了する前に連載終了と、その連載期間は名作の影にすっぽり収まる。
それだけを見るとどうしても「二番煎じ」というキーワードが浮かぶが、8年も連載が続いたという事実は、一定のファンを獲得していた人気作であったことの証左だろう。

二番手は何をやっても先行者のマネと思われてしまう点で損であるが、先行者を見て自分なりの個性を出すことができる、要するに後出しジャンケンができる点で有利である。
産業界では「コバンザメ商法」などと陰口をたたかれるが、それもまた立派な戦略。
「競艇少女」はまず、タイトルの通り、女の子を主人公に据えた。
「モンキーターン」の漫画家が描く女の子は、下手ではないが今ひとつかわいらしさがない。

というか、ときめかない、萌え要素が薄いといえばいいのか、おそらく「モンキーターン」の弱点であるそこを「競艇少女」はピンポイントで突こうと考えたのではないか。
競艇とは男女が同時にレースをする数少ない競技である。
その点を女子の視線で描けば、「モンキーターン」と一味違う競艇漫画になる、そこに勝機がある!と編集部は踏んだのだろうと想像する。

本作の主人公である「晶」(あきら)は、太眉がりりしい美少女。
アニメ化はされなかったが、ある程度はそれも意識した造形だったように思える。
なお、ここが「モンキーターン」ともっとも大きく異なるところだが、掲載誌が青年向けのヤングジャンプということもあり、いわゆるサービス(お色気)シーンが多い。

女子同士が腹を割って話をするのはたいてい風呂場で、何も隠さずスッポンポンである。
「どや!『モンキーターン』でこれができるか!」という作者の高笑いが聞こえてきそうだ(考えすぎ)。

ただ、作者は女の子の顔はそれなりに描き分けてはいるものの、体の描写に関してはワンパターンであった感が否めない。
首から下ももう少し研究してほしかった、惜しいところである。

さて、少し(かなり)遅くなってしまったがストーリーである。
基本的には「モンキーターン」と同じく、高校生が競艇に興味を持ち、試験を受けて合格、研修所に入り、プロとしてデビューし活躍するという流れである。
まあ、競艇漫画のフォーマットはこれしかないだろう。
主人公はどんな女の子かというと、大金持ちのお嬢様という設定になっている。

これは正直、ちょっと厳しい。
現実離れした大金持ちのお嬢様など、一般人には共感性が薄いからである。
その彼女が窮屈な生活から飛び出して競艇選手になると言っても、「だから?」でしかない。
そこをしっかり描きたかったのか、単行本の1巻を費やして彼女が競艇選手になるまでを描いているのだが、個人的にはかなり退屈だった。
よく連載を打ち切られなかったと思う。

お嬢様といっても、晶は最初からけっこう肝はすわっているし、根性もある。
話し言葉こそ「~ですわ」だが、中身はさほど普通の女の子と変わらない。
ならば、別にお嬢様という設定でなくてもいいではないか。

アイドルになれなかった女子高生でもいいし、ストレートに「お金を稼ぎたい」という貧困女子でもいい、一流大学に受かった秀才女子が入学辞退して競艇選手になるのでもいい。
そちらのほうが読者は思い入れられると思うのだが、どうか。

冒頭に述べたように、本作がそこそこの人気を獲得したのは事実だが、「モンキーターン」をしのぐほどまではいかなかった。
たしかに健闘したとは言えると思うが、そこまでだった。
「競艇少女」以降も競艇を扱った漫画はぽつぽつ出てはいるが、これといった注目作には育っていない。
ヒットメーカー三田紀房の手による「透明アクセル」は惜しかった。

競艇をテーマにしてはいるが、主人公は広告代理店マンであり、競艇をブームにしようという仕掛人のドラマである。
この「ひとひねり」は「さすが三田作品」と唸らせるが、単行本は3巻止まり、ヒットしたとは言い難い。
では、なぜ「モンキーターン」はヒットしたのか。

王道のフォーマット、当たり前の成長物語ではダメだろう。
個人的には、予想屋のストーリーが面白いのではないかと思っている。
ギャンブルを扱うので少年誌は無理だろう、掲載は青年誌で。
読者の知的レベルが高いビッグコミックあたりが狙い目だろうか。
ギャンブルの中でもっとも出走者が少ないのが競艇であるが、いかにして勝者を予想するかという、その知略と戦略は十分にドラマになると思う。
ちょっと「競艇少女」から離れてしまったが。

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Posted by 競艇の鬼